大腸ポリープ

大腸ポリープ

1. 大腸ポリープとは何か

大腸ポリープとは、これ自体が病名ではありません。ポリープとは「皮膚・粘膜などの面から突出し、茎をもつ卵球状の腫瘤」のことをさします。
したがって大腸ポリープは、「大腸の粘膜から内側に向かって限局性に隆起する病変(茎を持った卵球状の腫瘤)で、組織的には良悪性を問わない」と定義されることが一般的です。
大腸の壁は、粘膜、粘膜下層、筋層、漿膜で構成されており、粘膜がもっとも内側で糞便の通る道(腸管)に面している層、漿膜が腸管の外側と考えてください。大腸ポリープは、この腸管の内側がの粘膜の一部が隆起してできるもの、と捉えられています。
大腸ポリープは40歳代から増え始め、年齢を重ねるごとに増加していく傾向にあるといわれています。また、女性よりも男性に多いという特徴があります。

大腸ポリープの分類

大腸ポリープは、構造により大きく、腫瘍性と非腫瘍性に分けられます。
腫瘍性はここからさらに悪性腫瘍と良性腫瘍に分けられます。悪性腫瘍とはいわゆるがんのことです。良性腫瘍は線腫と呼ばれ、大腸ポリープの中では最も多く、約80%が腺腫であるといわれており、S状結腸や直腸に好発します。現時点ではがんではないものの、悪性化してがんとなる可能性を秘めているポリープでもあります。腺腫性ポリープはさらに3つに細分類することができます。

  1. 管状腺腫
    腺腫性ポリープの多くはこのタイプであり、がん化する可能性が低いのもこのタイプであるともいわれています。
  2. 絨毛腺腫
    発生頻度の低い腺腫性ポリープであり、最もがん化する可能性が高いタイプともいわれています。
  3. 管状絨毛腺腫
    管状腺腫と絨毛腺腫が混ざったタイプであり発生頻度は非常にまれであるといわれています。絨毛腺腫の次にがん化しやすいポリープです。

次に、非腫瘍性ですが非腫瘍性はさらに炎症性、過形成性、過誤腫性、その他に分類されます。このうち、本来あるべき腫瘍が過剰に育ったことによって形成された過誤腫性は2つに細分類できます。
1つ目は「若年性ポリープ」といい、主に幼児期に見つかることがあるポリープです。もちろん、成人でも見つかる可能性は十分にあります。出血がしやすく直腸に散在するポリープですが、がん化の可能性は低いといわれています。
2つ目は「Peutz-Jeghers型ポリープ」といい、食道以外の消化器官に多発性に発生しやすいポリープです。中には、100個以上見つかる方もいます。非腫瘍性ポリープは本来、良性でがん化の可能性は低いといわれますが、この「Peutz-Jeghers型ポリープ」は非腫瘍性の中で唯一、がん化する可能性があるポリープです。
また、炎症性ポリープは腸の炎症性疾患の後にできるポリープです。潰瘍性大腸炎など炎症性疾患はしばし大腸がんの発症を伴うこともありますが、炎症性ポリープそのものに発がん性はないといわれています。

大腸ポリープの症状

大腸ポリープのほとんどは、目立った自覚症状が無いといわれています。しかし、大腸ポリープができる部位やその大きさによっては、何らかの症状が現れます。特に肛門付近にできるポリープや、2cm以上の大きさになったポリープは、症状が出現しやすい傾向にあります。
主な症状は、粘液便や血便です。特に2cm以上の大きさになったポリープは、その表面が便でこすれることにより出血します。3cm以上になると、腹痛や下痢、お腹が張る、便が出にくいなどの症状が現れ、自覚症状として気付く方もいます。
さらに稀ではありますが、大きくなったポリープが肛門をふさいでしまい、腸閉塞が起こることもあります。

大腸ポリープの原因

現在のところ、大腸ポリープの原因は、未だ明確にはなっていません。しかし、動物性たんぱく質や脂肪の摂り過ぎや、食物繊維の不足が原因であると考えられています。また、大腸ポリープは体質も関係しており、大腸ポリープができやすい体質の人もいます。
他にも、遺伝的な要素が大腸ポリープの原因になる可能性もあり、親族の中に大腸ポリープができたことのある方は、そうでない方よりも、大腸ポリープができやすい傾向にあるといわれています。

2. 大腸ポリープの検査

主に行われる大腸ポリープの検査は、便潜血検査、バリウム検査、内視鏡検査の3つです。

便潜血検査

便に血液が混入しているかどうかを、科学的あるいは免疫的に見る検査です。「目では見えない少量の血液であっても調べることができる」とい特徴があり、大腸ポリープの約30%は便潜血で発見されているともいわれています。
検査は連続して2日間の便を採取し、その便に血液が混じっていないかどうかを、検査機器を使って調べます。集団で行うことができ、かつ簡易的であり体への侵襲が少ないというメリットがある一方、痔や炎症性の腸疾患などポリープ以外の病気も見つかることもあります。この便潜血検査で陽性反応が出た場合には、次の検査に進むことになります。

直腸造影検査

大腸の検査の中でも歴史のある検査方法です。下剤を内服して大腸内を空にした後、直腸からバリウムという造影剤を注入してレントゲン撮影を行って調べます。大腸全体を調べることができる一方で、平坦なポリープの場合は見逃されやすいといわれています。近年では内視鏡検査ができない方への補助検査として、行われることがあります。

内視鏡検査

現在主流となっている検査方法です。直接腸内の様子を見ることができるため、ポリープの形や大きさ、血管の走行などを見ることができたり、造影検査では見ることのできないような小さなポリープを発見できることがあります。また、必要に応じてですが、検査と同時に治療を行えるというメリットもあります。
しかし、大量の下剤を内服して腸内を空にするなど、身体にはそれなりの侵襲があります。便潜血で陽性となった場合の精密検査として、受けていただくことが多い検査です。
入院なども必要なく20分前後で終わります。

また、親子兄弟などの血縁関係者に大腸ポリープや大腸がんなどの既往歴を持つ方がいる場合は、遺伝によって腫瘍性のポリープが発生する可能性が高いといわれています。このような場合は、今現在特に症状が現れていなくても、早めに検査を受けていただくことをおすすめします。

大腸ポリープは、そのまま放置しているとやがて大腸がんに移行する可能性があります。大腸ポリープの中でもがんに移行しやすいものとそうではないものがありますが、患者様ご自身が大腸がんになりやすい体質かどうかを示す、ひとつの指標にもなるといわれています。症状の有無に関わらず、定期的に検査を受けることで早期に発見することは、がん予防対策としてとても重要であると考えられています。

3. 大腸ポリープの治療

大腸ポリープの治療は、主に内視鏡下で行われます。
良性なポリープや腫瘍であると判断された場合には、内視鏡検査の際にそのまま切除するという方法があります。
がん化の可能性があると判断された場合には、外科的な切除(場合によっては手術)が必要となりますが、ほとんどの大腸ポリープは内視鏡治療で治療が完了できる傾向にあります。
大腸の内視鏡下で切除できる病変は

  • 径6mm以上の良性のポリープ
  • リンパ節への転移の可能性がほとんどなく内視鏡を使って一括で切除できるがん
  • 径5mm以下の良性腫瘍だが、平坦あるいは陥没型のポリープや、がんとの区別が難しい場合

とされており、これらに該当する場合、大腸内視鏡治療の適応になります。尚、内視鏡下で行われる治療は3つに分類されます。

ポリぺクトミー

茎のある形のポリープに対して行う治療法で、ポリープの茎にスネアと呼ばれる金属製の輪をかけて、その輪に高周波電流を流してポリープを切り取ります。出血傾向にある方、ポリープが大きくスネアがかけられない方、穿孔を起こすリスクのある方に対しては、行えません。

EMR(内視鏡的粘膜切除術)

粘膜の下に薬液を注入してポリープを持ち上げ、スネアをかけて高周波電流を流して切り取る方法です。茎のないポリープでがんが疑われるものや、粘膜の表面にできておりど正常な粘膜も含めて切除することが望ましいポリープに、適応となることが多いです。

ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)

粘膜の下に薬液を注入し、専用の電気メスで病変の周囲の粘膜を切開し、少しずつポリープを剥離して切除していく方法です。ポリープ周囲の組織ごと一括での切除が望ましくEMRでの切除が困難なポリープが適応となります。

内視鏡治療後には出血が起こるリスクがあります。出血は大腸ポリープの大きさによってそのリスクは異なるとされており、大きさが直径3cm以上の大腸ポリープは、直径5mm以下の大腸ポープと比べると、出血リスクはその30倍になるともいわれていますといわれています。
ポリープのサイズが小さくても、抗凝固薬など「血液がサラサラになるお薬」を飲まれている方も出血のリスクがあるため、医師の指示に従い、休薬などを行う場合があります。

大腸ポリープが非常に小さいという場合やくびれのないポリープであったという場合には、クリップ状のホットバイオプシと呼ばれる鉗子で、つまんで切除することもあります。

非腫瘍性であり小さなポリープは、切除せずに経過観察となることもあります。特に直腸やS状結腸でよくみられる、白色で直系が5mm以下の多発するポリープ(過形成性ポリープ)は、特に目立った症状が無い場合には経過観察となることもあります。以前は、大腸ポリープであればすべて切除という方針になることが多かったのですが、現在は「がん化する可能性が高いポリープ」を切除していく、という考え方に変わりつつあります。
しかし、腺腫の場合は、直径1cmを超えてから急激にがん化する可能性が高いとされ、慎重な判断が必要です。
切除したポリープは病理検査で詳しく調べ、悪性かどうかを判断していきます。