潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎

1. 潰瘍性大腸炎とはどのような疾患か

潰瘍性大腸炎とは、炎症性腸疾患(IBD)の一種で、厚生労働省の指定難病になっている疾患の1つです。難治性炎症性腸管障害による調査研究班では、潰瘍性大腸炎は、「主として粘膜を侵し、しばしばびらんや潰瘍を形成する、大腸の原因不明のびまん性非特異性炎症である」と定義されています。現在のところ、明らかな原因は不明であるものの、腸内細菌、食事、遺伝的素因、心理学的要因が複雑に絡み合い、免疫システムが異常を起こすことがその可能性として考えられています。本来外敵に対して大腸で働く免疫システム(腸管壁から体内に侵入しようとする異物を攻撃するシステム)が、自分の大腸を異常に攻撃してしまうことで、大腸に炎症が起こると考えられてきています。一般的に潰瘍性大腸炎の病変は直腸から連続的に、口側に広がる性質があります。潰瘍性大腸炎は、30歳以下の成人に多い(初発時の年齢が15歳から35歳までが多い)ですが、小児から60歳以上の年齢で幅広く発病する疾患です。また、発病率に男女差はありません。潰瘍性大腸炎は寛解(かんかい)や再燃(さいねん)という状態を繰り返しながら生涯にわたって付き合っていく病気です。難病ではあるものの、生存率は潰瘍性大腸炎の無い一般の方とほとんど変わりないとされています。しかし、発病からの年数が長くなると大腸癌のリスクが高くなるため、定期的な大腸内視鏡検査による大腸癌のスクリーニングが重要になります。

1.1 潰瘍性大腸炎の症状

潰瘍性大腸炎の主症状は、血便、粘血便、下痢です。軽症の患者様では血便が見られませんが、中等症以上の患者様では下痢に粘液と血液が混じった状態となります。
主症状以外にも腹痛、発熱、食欲不振、体重減少、貧血などがみられます。さらに関節炎、眼の症状(ぶどう膜炎や虹彩炎)、自己免疫性膵炎、皮膚の症状(結節性紅斑、壊疽性膿皮症など)などの腸管外合併症が起こることもあります。潰瘍性大腸炎は病状が増悪すると、排便が1日に10回を超え重度の腹痛、便意の切迫に伴う痛みを生じるようになります。長期にわたり、炎症が持続した場合、大腸癌を発症するリスクが増加します。

1.2 潰瘍性大腸炎の分類

潰瘍性大腸炎の分類方法には病型分類、病期分類、重症度分類がありこのすべての分類方法を用いて潰瘍性大腸炎の重症度を評価します。

病型分類はさらに、全大腸炎型、左側大腸炎型、直腸炎型、右側あるいは区域性大腸炎に分類されます。

  • 全大腸炎型:病変が全大腸におよぶものです。潰瘍性大腸炎全体30~40%がこれにあたります。
  • 左側大腸炎型:病変は主に大腸の左半分です。頻度は30~40%ほどです。
  • 直腸炎型:病変は主に直腸に起こり、頻度は20~30%ほどです。
  • 右側大腸炎型:病変が右側結腸(盲腸~横行結腸)に存在するものです。
  • 区域性大腸炎型: 病変が区域性に存在するものです。

病期分類は、活動期と寛解期に分類されます。活動期とは、血便を訴え、内視鏡的に血管透見像の消失、易出血性、びらん、または潰瘍などを認める状態をいいます。一方の寛解期とは血便が消失し、内視鏡的には活動期の所見が消失し、血管透見像が出現した状態をいいます。
重症度分類では、排便の回数、血便、発熱、頻脈、貧血の有無、赤血球沈降速度により重症度を軽症、中等症、重症、劇症に分類します。劇症は重症の中でも、特に症状が激しく重篤な病状のことをいいます。
診断基準は下記の如くであります。

重症 中等症 軽症
1)排便回数 6回以上 重症と軽症 の中間 4回以下
2)顕血便 (+++) (+)~(-)
3)発熱 37.5度以上 (-)
4)頻脈 90/分以上 (-)
5)貧血 Hb10g/dl以下 (-)
6)赤沈 30㎜/h以上 正常

さらに、以下の5項目をすべて満たした場合、劇症型と診断されます。

  1. 重症基準を満たしている。
  2. 15回/日以上の血性下痢が続いている。
  3. 38℃以上の持続する高熱がある。
  4. 10,000/mm3以上の白血球増多がある。
  5. 強い腹痛がある。

また、難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班では、

  1. ①ステロイド依存性潰瘍性大腸炎
    ステロイドを減量中に再燃する場合
  2. ②ステロイド抵抗性の潰瘍性大腸炎
    ステロイドを一定容量で一定期間投与しても無効な場合(プレドニゾロン1-1.5㎎/㎏/日の1-2週間投与で効果がない)
  3. ③ステロイド以外の厳密な内科的治療下にありながら、頻回に再燃を繰り返すあるいは慢性持続型を呈する場合

1・2・3を、治療反応性に基づく難治性潰瘍性大腸炎と定義しています。

1.3 潰瘍性大腸炎の診断基準

以下の4項目の状態をすべて満たすと潰瘍性大腸炎であると診断されます。

  1. 持続性または反復性の粘血・血便、あるいはその既往がある
  2. 下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)あるいは注腸X線検査(大腸バリウム検査)で特徴的な所見を認める
  3. 下部消化管内視鏡での生検による組織学的検査で特徴的な所見を認める
  4. 以下のいずれかによる潰瘍ではないことが明らかである
    感染性腸炎(細菌性赤痢、アメーバ赤痢、サルモネラ腸炎、カンピロバクター腸炎、大腸結核、クラミジア腸炎など)、クローン病、放射線照射性大腸炎、虚血性大腸炎、薬剤性大腸炎、腸管ベーチェット、リンパ濾胞増殖症など

2. 潰瘍性大腸炎の検査

潰瘍性大腸炎は、血液検査や便検査などに加え、さまざまな画像検査を組み合わせて確定診断を行います。
潰瘍性大腸炎の検査では主に、下部消化管内視鏡検査が行われます。大腸カメラともいわれています。粘膜の炎症の程度を直接観察できるほか、炎症の範囲の確認や重症度も確認できます。また、この検査によって潰瘍性大腸炎の全容を把握し、より詳細な治療計画を立てることもできます。治療時には組織を採取することもできるため生検を行ってさらに診断を確定させたり治療方法を検討したりと幅広い用途で行われます。患者様の病状によっては、複数回の下部消化管内視鏡検査を行うこともあります。下部消化管内視鏡検査を行う場合、下剤を内服して腸内をカラにする必要がありますが、潰瘍性大腸炎で下痢が続いているという方では、この処置をせずに大腸カメラができる場合もあります。血液検査は、炎症の有無を調べたり、がんの腫瘍マーカーなどほかの病気になっていないかどうかを調べたりする検査です。便潜血検査は、便に血液が混じっているかどうかを調べるためのものです。これだけで大腸の病気を確定することはできませんが、目に見えない出血の有無を判断することはできます。ほかにも下部消化管内視鏡検査で診断が確定しない場合には、上部消化管内視鏡検査、小腸内視鏡検査、小腸造影検査、カプセル内視鏡検査、CT検査、MRI検査などの検査を補助的に行うこともあります。

3. 潰瘍性大腸炎の治療

潰瘍性大腸炎の主な治療方法は、薬物療法です。治療には、活動期の炎症を寛解にする寛解導入療法と、一端寛解に至った患者様の状態を維持する寛解維持療法があります。

寛解導入療法において、軽症及び中等症の患者様では「5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤」と呼ばれる種類のお薬を第一選択として使用します。これは腸の炎症を鎮める効果が期待できる薬で、経口剤、注腸剤(肛門からの投与)、坐剤(肛門からの投与)があります。潰瘍性大腸炎の約半数の患者様が、5-ASA製剤のみで炎症をコントロールできます。この薬は長期間の使用をすることもでき、症状が治まった後の寛解維持のためにも使用することができます。しかし、5-ASA製剤が体に合わず、導入後に腸炎症状が逆に悪くなるという場合もあります(不耐といいます)。その場合は、内服を中止して他の治療薬への変更を考慮します。5-ASA製剤が使用できない患者様や効果がみられない患者様、重症となっている患者様には、ステロイド製剤の使用を検討します。他に寛解導入療法としては、顆粒級除去療法(GCAP)、抗TNF-α抗体製剤(インフリキシマブ、ゴリムマブ、アダリムマブ)、α4β7インテグリン抗体製剤(ベドリズマブ)、JAC阻害剤(ゼルヤンツ)、タクロリムス水和物、シクロスポリンがあります(シクロスポリンは保険適応には含まれていません)。顆粒球除去療法は、血液をいったん体外に取り出し、炎症に関与している血液成分を取り除く方法で、中等症から重症の潰瘍性大腸炎の寛解導入治療として有効です。抗TNF-α抗体製剤は、TNF-α(主にマクロファージから産生される炎症物質)を抑えるための治療法で、インフリキシマブは点滴での投与、ゴリムマブとアダリムマブは皮下注射での投与となります。α4β7インテグリン抗体製剤であるベドリズマブは、活性化されたリンパ球上のα4β7インテグリンと特異的に結合し、リンパ球が腸粘膜へ移動する経路を阻害する薬で、点滴での投与になります。JAC阻害剤であるゼルヤンツは、細胞内に存在するチロシンキナーゼの一種であるヤヌスキナーゼ(JAC)を阻害することで炎症を抑制する薬で、内服薬です。どの薬を使用するかは、症状や重症度、年齢などから検討されます。例えば、免疫抑制力の強い薬は、高齢者が服用することで致死的な感染症にかかることが考えられます。こうしたことを考慮しながら、治療方法を検討していきます。

潰瘍性大腸炎の症状が寛解したら、症状が出現していない状態を維持する寛解維持のための治療が必要になります。寛解維持のために使用するお薬は、5-ASA製剤、免疫調節薬(アザチオプリン、メルカプトプリン水和物)、抗TNF-α抗体製剤、α4β7インテグリン抗体製剤(ベドリズマブ)、JAC阻害剤(ゼルヤンツ)が使用されます(メルカプトプリンは保険適応には含まれていません)。アザチオプリンとメルカプトプリン水和物は、細胞の核酸合成を阻害する代謝拮抗薬であり、内服薬です。
寛解維持療法は、潰瘍性大腸炎を再燃させないために必要な治療です。寛解維持の治療を中断してしまうと、再燃するリスクが高くなります。

重症の患者様や、ある程度の全身障害を伴う中等症の患者様では、脱水や貧血、低栄養などといった全身症状を改善させる目的で入院し、適切な治療を行うことが必要です。

薬物を使用した治療を行っても、薬剤に反応せず改善がみられないという場合や、症状の増悪がみられるような場合には、手術の適応となることもあります。主な適応条件は

  • 穿孔(腸に穴が開くこと)を起こしている場合
  • 大出血をしている場合
  • 中毒性巨大結腸症
  • 内科的治療で使用する薬剤が無効であり、日常生活が困難になるなどQOLが低下した場合
  • 内科的治療で重症な副作用が出現する可能性が懸念される場合
  • 大腸癌及びHigh grade dysplasia
  • 腸管外合併症(内科治療に抵抗する壊疽性膿皮症、小児の栄養障害)

などです。 手術は、大腸全摘術、回腸嚢肛門(管)吻合術が標準術式とされております。