糖尿病

糖尿病について

1.糖尿病とはどのような疾患か

糖尿病とは、インスリンというホルモン自体の量が不足したり、上手く作用しなくなったりすることが原因で、高血糖(血液中の糖分が過剰になる)の状態が慢性的に続く病気です。

1.1症状

一般的に、初期の糖尿病には自覚症状がありません。病気の進行とともに次のような自覚症状があらわれるようになります。

  • のどが渇く、水をよく飲む
  • 尿の回数が多い
  • 体重の減少
  • 体がだるい、疲れやすい

これらの症状に気づくころは、血糖値はかなり高く、すでに糖尿病がある程度進行している状態であると言えます。

血液中の糖分は「血糖」と呼ばれています。私たちは食事によって摂取した栄養素を腸から吸収しますが、その中には糖も含まれています。糖は血液の流れに乗って、筋肉や細胞に取り込まれてエネルギーとなるのですが、このとき血液中のインスリンが糖の吸収を助けて血糖値を下げる大切な役割を担います。 しかし糖尿病になると、インスリンが十分にその役割を果たせず、血液中に糖があふれた状態、いわゆる高血糖を招いてしまうのです。

厚生労働省の「平成29年患者調査」によると、糖尿病患者数は全国で328万9,000人いると推計されています。さらに糖尿病の可能性を否定できない「糖尿病予備軍」を含めると、日本には非常に多くの糖尿病患者さんやその予備軍がいます。
厚生労働省が行った「国民栄養・生活調査」によると、2016年に行われた調査結果からは、「糖尿病を疑われる人」および「糖尿病の可能性を否定できない人」は、ともに1,000万人を超えていました。合わせると2,000万人の「糖尿病予備軍」がいるとの推計値が出されています。
さらに、翌年の2017年に行われた同調査結果によると、糖尿病予備軍と考えられる人の割合が増えており(糖尿病を疑われる人は12.1%から13.6%へ増加、糖尿病の可能性が否定できない人は12.1%から16.2%へ増加)単純に計算してもおよそ1.2倍の糖尿病予備軍がいることになります。

1.2分類と原因

糖尿病は1型糖尿病と2型糖尿病に大別されますが、妊娠した女性に起こる妊娠糖尿病などもあります。

1型糖尿病は、自己免疫疾患などが原因で発症するとされています。インスリンをつくる能力が低いため「インスリン依存型」とも呼ばれます。日本人では少ないのですが、発症は若い人に多く、急激に症状があらわれ、糖尿病を発症することが多いとされています。

2型糖尿病とは、遺伝的な要因の他、悪しき生活習慣(運動不足、過食)が重なることが要因となって発症します。「インスリン非依存型」とも呼ばれ、日本人の糖尿病の大部分は、この2型糖尿病が占めています。

妊娠糖尿病は、妊娠中の女性が発症する糖尿病です。妊娠中は、インスリンの機能を弱める酵素やホルモンが増加するため、非妊娠時よりも多くのインスリンを必要とします。しかしインスリンの機能が食事量などに追いつかなくなると、妊娠糖尿病を発症します。

糖尿病のその他の病態としては、膵β細胞機能やインスリン作用に関わる遺伝子に異常があるものや、ほかの疾患(膵外分泌疾患、内分泌疾患、肝疾患など)が原因で発症する糖尿病があります。

1.3合併症

初期の糖尿病は一般的に無症状であるため、発症していることに気がついていない方が多いのが現状です。糖尿病の怖さは、自覚症状が現れた時にはすでに進行していることです。早めに気付いて治療を始めても、自覚症状がないからといって治療を怠ってしまう患者様も少なくありません。
さらに糖尿病が怖いのは、自覚症状が顕著になる頃にはさまざまな合併症が引き起こされている可能性があることです。
糖尿病の症状は、血糖値が改善されれば治まってきますが、合併症は一度発症してしまうと治療が困難になってしまいます。以下の合併症は、糖尿病の3大合併症といわれているものです。

神経障害(糖尿病抹消神経障害および自律神経障害)

糖尿病の合併症として最初に起こりやすい合併症で、足の末端の知覚障害から始まります。片足の指先のしびれから始まり、足の裏へと進行します。 神経障害が悪化すると、痛みを感じなくなります。ちょっとしたケガの傷から細菌が感染し、壊疽(えそ)が起こり、取返しのつかない状態になってしまうケースも少なくありません。

網膜症(糖尿病網膜症)

糖尿病になると、眼底に出血が生じる糖尿病網膜症を発症しやすくなります。水晶体が濁る白内障も発症しやすくなりますが、網膜症は白内障と違い、治療が困難な病気です。進行につれ失明にいたるケースもありますので、注意が必要な合併症の一つです。

腎症(糖尿病腎症)

糖尿病が進むと、腎臓もダメージを受けます。腎臓の機能が低下するとやがて腎不全となり、人工透析が必要となります。

2.糖尿病の検査

糖尿病や糖尿病の予備軍を早期で見つけるには、定期的な健康診断が大切です。早期に血糖コントロールすることで、合併症を予防することができます。

2.1検査方法と検査結果から考えられることは

概要

糖尿病は、何かしらの自覚症状があるかどうか、あるいは「高血糖が慢性的に持続しているかどうか」によって診断することができます。ただし自覚症状が見られる頃にはすでにある程度糖尿病が進行した状態と考えられますので、一般的には健康診断などで「血糖値が高い」と指摘されて、医療機関を受診する方が多いようです。

医療機関では血液検査によって、空腹時血糖(または随時血糖値)と、HbA1cの二つを同時にチェックします。空腹時血糖値(または随時血糖値)は、採血した時点での血糖値を表すものです。一方のHbA1cは、過去1、2ヵ月の血糖値の持続的な値を反映するものです。
実際に糖尿病と診断するためには、いくつかの段階があります。

初回の検査で、血糖値とHbA1がともに糖尿病型と確認された

この場合は、初回の検査結果から糖尿病と診断することができます。

血糖値だけが高く、糖尿病の典型的な症状(多飲、多尿など)が認められた

この場合も初回の検査で糖尿病と診断することができますが、典型的な症状がなければ再検査で経過を観察します。

再検査で(なるべく1か月以内)再度糖尿病型が認められた

この場合も糖尿病と診断することができます。

血糖値、HbA1のいずれも糖尿病型では無かった

この場合は「糖尿病の疑い(予備軍)」と診断できます。初回検査だけでは診断ができないため、引き続き再検査(3~6か月以内)を行います。

初回検査でHbA1cだけが糖尿病型であった場合も再検査が行われますが、HbA1cのみの反復検査では糖尿病と診断することができません。再検査において、血糖値、HbA1cともに糖尿病型である、また血糖値だけ糖尿病型である場合に、糖尿病と診断されます。
HbA1cのみ糖尿病型である、またどちらも糖尿病型でない場合は、糖尿病の疑いと診断され、引き続き再検査(3~6か月以内)を行います。

糖尿病の検査にはもう一つ、経口ブドウ糖負荷試験というものもあります。この検査は糖尿病の診断に必須な検査ではありませんが、糖尿病型、正常型のいずれにも属さない境界型(糖尿病予備軍)を見つけるのに有効な検査です。
ただし、自覚症状などから明らかに糖尿病が推測される場合は必要がないとされています。著しい高血糖が認められる方は病状を悪化させてしまうため、受けることはできません。

3.糖尿病の治療

糖尿病の治療には大きく3つ、食事療法、運動療法、薬物療法があります。

3.1重症度に合わせた治療

一般的な病気の治療というと、服薬や注射だと考えますが、糖尿病の治療の基本となるのは食事療法です。他の病気との違い、糖尿病治療の特殊な点だと言えるでしょう。これは糖尿病の重症度に関わらず、軽症から重症まで必要な治療法であり、医療者からの食事指導を受ける必要があります。

食事療法について

病気の進行度によって食事指導の内容は変わってきますが、基本的に食べていけないものはありません。注意すべきことは「食べる量・摂取カロリー」であり、制限はあるものの、工夫次第で美味しい食事を楽しむことができます。食事療法が開始されると、定期的に通院し血糖コントロールがうまく行われているかをチェックします。
食事療法は、毎日のちょっとした心がけ次第で効果的に行うことができます。

  • ゆっくりと、よく噛んで
  • 1日3食、規則正しい食事を
  • バランスよく食べる
  • 腹八分目を心がける
  • 寝る前など、遅い時間の食事は避ける

糖尿病の患者様は、同じ生活習慣病に分類される「高血圧」を予防するために、減塩も心がける必要があります。また、糖尿病腎症が進行した患者さんについては、塩分やたんぱく質、カリウムなどの摂取制限があります。

1日に必要なエネルギー量は、身長と体重、身体活動量できまります。しかし、性別・年齢・血糖コントロールの状況・合併症の有無によって状況は異なりますので、主治医と相談して決めることになります。
1日に必要なエネルギー量をもとに、三大栄養素である炭水化物・たんぱく質・脂質のほか、ミネラルやビタミンといった栄養素をバランスよく取り入れた食事を心がけましょう。

運動療法について

糖尿病治療において、食事療法と並んで生活習慣を改善するために重要なのが、運動療法です。運動することで、ブドウ糖をエネルギーとして消費し肥満を改善されると同時に、筋肉量がふえることもでもインスリンのはたらきが高まり、血糖値が下がりやすくなる効果が期待できます。また、血圧が安定することで、動脈硬化を防ぎ、合併症の予防にもつながります。
血糖値を下げる運動には、有酸素運動や筋力トレーニングがあります。有酸素運動とは「全身運動」につながる運動で、ウォーキングやジョギング、水泳などがあります。筋肉を維持するためには、筋力トレーニングを取り入れるとより効果的です。
ただし、運動療法を行う際は心臓や腎臓など体に負担がかからないよう、気を付ける必要があります。どのような運動をしたら良いかを主治医に相談し、で無理なく継続的に行なうことが大切です。

薬物療法について

糖尿病の治療に使われる薬は、内服薬と注射に分けられます。
1型糖尿病は、インスリンの絶対量が足りないことが原因となりますので、インスリン注射を行うのが一般的です。
一方の2型糖尿病は、食事療法と運動療法を行いながら、必要に応じて内服薬を使うことが多くなります。実際の血糖値やHbA1c値のほか、患者様の体格、インスリン分泌能、インスリンへの反応の仕方など、糖尿病の状態によって内服薬を選択します。それでも血糖コントールが十分でない場合は、インスリンを注射で補うこともあります。
内服薬の種類は、次のように分類されます。いずれも「血糖降下薬療法」として利用されています。

  • インスリン促進薬(インスリンの分泌を良くする)
  • インスリン抵抗性改善薬(インスリンの効きを良くする)
  • インクレチン関連薬(インスリンの分泌を促すホルモン・インクレチンの作用を強める)
  • 食後高血糖改善薬(糖分の消化吸収を遅らせる)

薬物療法の中には、内服薬ではなく、インスリンの自己注射という方法もあります。
1型糖尿病の方は、自分の体内でインスリンを作ることができないため、インスリンの自己注射による薬物療法が行われます。2型糖尿病でも、状況に応じてインスリン自己注射を行うことがあります。

糖尿病の予備軍と診断されたら、食事や運動など生活習慣を見直すことが重要です。
糖尿病は、なるべく早い段階で治療を開始し、継続させることで改善が期待できる疾患です。糖尿病と診断されたら、医師の診断のもと治療と定期的な検査を受け、合併症予防にも努めましょう。