高血圧

高血圧について

1.高血圧とはどのような疾患か

高血圧とは、分かりやすい表現をするなら「血管の中を流れる血液の圧力が強くなり続けている状態」です。

1.1症状

面高血圧

高血圧が進行すると、血管壁の弾力性やしなやかさが失われます。さらに、血管壁に傷ができてしまうことでコレステロールなどが沈着すると、動脈硬化がより進行し、血管内が細くなってしまい、狭い血管内に血液を流すためにさらに血圧が高くなります。また、心臓、眼底、脳、大動脈、腎臓など、さまざまな臓器の血管がもろくなっていきます。
特に日本人では、脳梗塞や脳出血を発症する人が欧米人に比べて多いといわれており、血圧のコントロールはとても大切です。

高血圧は、目立った症状が少なく、サイレントキラー(沈黙の殺人者)ともいわれ、自覚症状のないままに徐々に進行していきます。何も指摘されなければ自分で血圧測ることは少ないため、健康診断で初めて指摘されることが多いようです。40歳以上の人のうち約45%が高血圧の基準に該当するといわれており、早期診断早期治療につなげていくことが大切です。

1.2種類と原因

高血圧は、その要因によっていくつかのタイプに分類されます。中でも日本人に一番多い(高血圧の患者さんのおよそ90%を占める)タイプが「本態性高血圧」です。なかなか単一の原因を特定できない、いわゆる一般的な高血圧で、遺伝的な要因も大きいとされています。腎臓や神経系などの遺伝的な異常に加えて、加齢や塩分の過剰摂取、肥満、過剰飲酒、精神的ストレス、自律神経の調節異常、運動不足、野菜や果物(カリウムなどのミネラル不足)、喫煙などの生活習慣や環境等の様々な要因が組み合わさって、発症すると考えられています。メタボリックシンドロームとも関係が深いものです。
このうち、特に私たち日本人にとって最大の要因となり得るのが、塩分の過剰摂取だと言われています。
また、日本人の場合、肥満を伴わない高血圧が半数以上を占めますが、小児の場合は肥満度が増すにつれて高血圧となる子供たちが増えていきます。若年から中年の男性では、肥満、特に内臓肥満が要因となる高血圧が増えています。
さらに、加齢という問題もあります。高血圧は加齢とともに患者数が増える傾向がありますが、75歳以上の高齢者は一般に多病(複数の疾患を発症している状態)であり、併存疾患などによって血圧上昇が認められます。血圧の動揺性が大きく、測定の条件によって変動しやすいため、総合的な診断が必要になります。

本態性高血圧を除いたおよそ10%は、腎臓の病気や内分泌異常、睡眠時無呼吸症候群などによる「二次性高血圧」です。この場合は、原因を特定して治療することにより血圧を効果的に下げることができるため、適切な診断が重要になります。特に、若年発症の重症高血圧、50歳を過ぎてから発症した高血圧、急速に発症した高血圧には、注意が必要です。二次性高血圧を疑い、早めにかかりつけ医に相談しましょう。

1.3患者さんはどれくらいいるのか

厚生労働省が行った平成29年国民健康・栄養調査によると、高血圧の可能性がある人(収縮期血圧140mmHg以上となった人)の割合は男性で37.0%、女性で27.8%となりました。これを20歳以上の日本人人口に当てはめると、およそ3400万人がこれに該当することになります。
しかし、同じ厚生労働省が行った「患者調査」によると、日本における高血圧症の患者数は、993万人あまりとされています。自覚症状がないために、高血圧状態であっても医療機関を受診していない人が、相当数いるということがわかります。また、平成27年人口動態統計(確定数)の概況によると、高血圧症疾患による死亡数は年間6,726人(心疾患及び心腎疾患で3,213人、その他の高血圧疾患で3,513人)となっていますが、平成29年現在、日本人の死因のワースト4はがん、心疾患、脳疾患、老衰です。このうちの心疾患と脳疾患で、日本人の死因の23%以上を占めるとされています。心疾患と脳血管疾患に関しては、高血圧が大きなリスク要因となっています。

2.高血圧の検査

高血圧は基本的に、血圧測定が主な検査ですが、測定の方法にはいくつかの種類があります。

2.1検査方法と検査結果から考えられることは

高血圧と診断するには、正しい血圧測定が必要です。血圧を評価するには、3種類の方法があります。

  • 病院や医院などで測る診察室血圧
  • 自宅で自ら測る家庭血圧
  • 医療機関で特殊な機器をつけて30分~1時間ごとに測り、1日の血圧動態を測定する24時間自由行動下血圧

があります。一般的には、診察室血圧と家庭血圧が診断に用いられます。最近の医学的な研究により、心筋梗塞や脳卒中の発症を予測する方法として、診察室血圧よりも家庭血圧の方が、信頼性が高いことが分かってきました。高血圧学会のガイドラインでも、高血圧の判定では、家庭血圧にもとづくほうを優先するとしています。

高血圧であるか、あるいはどのくらいのレベルに分類されるかは、次のように定められています。

分類 診察室で測定したとき(mmHg) 自宅で測定したとき(mmHg)
収縮期血圧 拡張期血圧 収縮期血圧 拡張期血圧
正常血圧 <120 かつ <80 <115 かつ <75
正常高値血圧 120-129 かつ <80 115-124 かつ <75
高値血圧 130-139 かつ/または 80-89 125-134 かつ/または 75-84
高血圧 140以上 かつ/または 90以上 135以上 かつ/または 85以上

※高血圧 は測定結果により、さらにⅠ度からⅢ度に分類されます

診察室で測定したときの収縮期血圧が140以上、拡張期血圧が90mmHg以上、自宅で測定したときの収縮期血圧が135以上、拡張期血圧が85mmHg以上である場合、高血圧と診断されます。

血圧はいろいろな状況で変動しますので、そのパターンによっていくつかに分類することができます。

  • 白衣高血圧:家庭血圧でいつも正常血圧である人が、医師の前だと緊張して血圧が上がるタイプ
  • 仮面高血圧:診察室以外で測定すると血圧が高くなるタイプで、仮面高血圧の中にはさらに
    • 早朝高血圧
    • 夜間高血圧
    • 昼間高血圧(ストレス下高血圧) がある
  • 血圧日内変動異常:通常は下がるはずの夜間血圧が十分に下がらない、あるいは下がり過ぎてしまうタイプ

例えば、健康診断等で一時的に血圧が高くても、多くの時間帯で家庭血圧を測定して正常血圧であれば、降圧薬による治療は必要ないとされています。家庭血圧を診断や治療にうまく用いることで正確に診断し、治療の効果をより高めていくことができます。ご自分の血圧の状態を理解するためには、上腕にカフを巻くタイプの家庭用血圧計を用い、朝(起床後1時間以内、排尿後、服薬前、朝食前など)と夜(就寝前)の1日2回、座位にて1-2分の安静後に測定し、測った血圧は血圧手帳などに記録しておくとよいでしょう。朝晩それぞれの測定値7日間(少なくとも5日間)の平均値で、家庭血圧での正確な血圧の状態を判断することができます。血圧の状態が気になる方は、測定結果をかかりつけ医に見せて、相談しましょう。診断や治療において、継続的な血圧測定がとても重要です。

3.高血圧の治療

高血圧には、いくつかの治療方針があります。患者さまご自身が治療に前向きになり、継続していくことが必要です。

3.1非薬物療法

すぐにでも始められる方法として、非薬物療法があります。具体的には、減塩、体重の減量、適度な運動、アルコールの摂取量を減らす、食事内容の改善があげられます。特に食塩は、腎臓の働きの一部を障害し、血液の量を増やしてしまいます。すると血圧がさらに高くなり心臓に負担を与えることになるため、高血圧には減塩が必要です。さらに食塩による血圧は、男性よりも女性の方が上がりやすく、若い人よりも高齢者の方が上がりやすいといわれています。
健康な日本人が当面目標とすべき1日の食塩摂取量は、男性で8g未満、女性で7g未満とされています。しかし実際の食塩摂取量の平均値は9.9gであり、男女別にみると男性10.8g、女性9.1g、平均2g程度上回っている状況です。既に高血圧となっている方では、1日6g未満を目指すと良いでしょう。
また、肥満や過度の飲酒も、高血圧の原因となることが分かっています。腹八分目を意識し、過食を防ぐためにも週一回以上は体重を確認し、飲酒習慣のある方は週一日以上の休肝日を設けるようにしましょう。
心臓や脳など他の部位に病気がなければ、ウォーキングなどの有酸素運動を毎日30分以上行うのも有効です。
野菜や果物には、血圧を下げる働きのあるカリウムが多く含まれる食品があります。バランスの良い食事を心がけましょう。
また喫煙は血管が収縮し、一時的に血圧が上がります。喫煙により血液の流れを悪くし、血液が凝固しやすくなるため、動脈硬化の最も強力な危険因子です。
これらの生活習慣は、複合的に改善を行うことがより効果的です。食習慣の乱れや食事の偏りを少しでも改めることで、高血圧の治療だけでなく、生活習慣病の予防にも結び付けることができます。
一方で、一度にいろいろ変えようとすると大きなストレスにもなり、血圧のコントロールが難しくなることもあります。持病等で受診している方は、かかりつけ医に相談し、無理の無い範囲で改善していきましょう。

3.2原因の排除、軽減

充分な生活習慣の改善を行っても、血圧のコントロールが不十分である場合は、降圧薬治療が必要になります。降圧薬にはいくつか種類がありますが、大きく4つに分類されます。

  • カルシウム拮抗薬:血管を広げて血圧を下げる
  • レニン-アンジオテンシン系阻害薬(ARB、ACE阻害薬):血管を収縮させる体内の物質をブロックして血圧を下げる
  • 利尿薬:血液から食塩と水分(血液量)を抜いて血圧を下げる
  • β(ベータ)遮断薬:心臓の過剰な働きを抑えて血圧を下げる

一般的には単剤(一種類)を少量から、降圧効果が得られない場合は増量するか、他の種類の降圧薬を少量で併用したりします。どのお薬をどれくらい服用するのかは、患者さまの血圧の状態や他の疾患などによって変わります。

降圧薬は、たしかに血圧を下げることはできでも、高血圧の原因を治すわけではありません。一時的に下がったとしても、薬をやめると元にもどってしまう可能性が大いにあります。
高血圧は特に症状がないので、落ち着くと薬をやめてしまいがちですが、高血圧状態が長く続くと血管はいつも張り詰めた状態となり、次第に厚く、硬くなります。これが高血圧による動脈硬化です。
動脈硬化は、心筋梗塞や狭心症、脳出血や脳梗塞、大動脈瘤、腎硬化症、眼底出血などの原因となります。心臓に負担をかけると心不全にもつながります。こうした合併症を予防するためにも、血圧を正常化することが必要なのです。

3.3二次性高血圧の治療

二次性高血圧の原因となる疾患には、腎動脈狭窄症、原発性アルドステロン症、褐色細胞腫などがあります。外科手術により高血圧の治療が期待できるものがあります。
このほかにも、妊娠時に高血圧を発症することがあり、妊娠高血圧症候群と呼ばれます。妊婦さんのおよそ20人に1人の割合で発症します。早発型と呼ばれる妊娠34週未満で発症した場合、重症化しやすく注意が必要です。一般的には、出産後に急速に改善しますが、重症化した人は高血圧が出産後も持続することがあるので、かかりつけの先生の指導のもと、血圧コントロールを続ける必要があります。