食道がん

食道がん

1.食道がんとは

食道とは、咽頭(のど)と胃の間をつなぐ管状の臓器で、上から順に頸部食道、胸部食道、腹部食道と3つに区分されています。また成人の場合、食道全体の長さは平均で25~30cmほどあります。
食道には、口から食べた食物を胃に送るという働きがあり、食道の粘膜から分泌される粘液によって食物が通りやすくなっています。また、食物を飲み込んだときには、食物は重力で下に流れるとともに、筋肉でできた食道の壁が動くことにより胃に送り込まれます。この筋肉を食道の上端(のど側)を「上部食道括約筋」、下端(胃側)を「下部食道括約筋」と呼び、これらの働きにより胃の中の食物が逆流することを防いでいます。
食道がんとは、食道にできた悪性腫瘍(がん)のことをいいます。日本人の食道がんは、約半数が食道の中央付近から、次に食道の下部に多くできます。また食道がんの約9割が、食道の一番内側にある粘膜層にできる「扁平上皮癌」とよばれるがんです。食道がんは食道内にいくつも同時にできることもあり、60歳以上の男性に多くみられ、男女比は約5:1とされています。
がんが食道の壁の粘膜内にとどまるがんを早期食道がん、粘膜下層までで留まっているがんを表在食道がん、それより深い層まで及んでいるがんを進行食道がんと呼びます。
食道の粘膜から発生したがんは、大きくなると深層(食道の外側)に向かって広がっていき、食道を突き破ると気管や大動脈などの周囲の臓器にまで直接広がっていきます。このように広がっていくことを浸潤といいます。一方、食道の壁内にあるリンパ管や血管にがんが侵入してしまい、リンパ液や血液の流れに乗って、食道外にあるリンパ節や肺、肝臓などの他の臓器へとがんが移っていくことを転移といいます。
食道はその構造上、周囲に肺や気管、気管支などの多臓器が密接していることや、リンパ節が近くにあることから、浸潤や転移も起こりやすいといわれています。

食道がんの原因は複数ありますが、もっとも影響が大きいものとしては、喫煙と飲酒が挙げられます。その理由として、喫煙や飲酒の両方を嗜好している方では食道がんを発症する人が多い、というものがあります。また、熱いものを食べたり飲んだりすることも、食道がんの原因になり得ると考えられています。
さらに、食道がんの中でも腺がんと呼ばれるタイプの食道がんの場合は、パレット食道※が関係している可能性が高いということが分かっています。

※パレット食道:胃酸が食道に逆流し、食道粘膜が炎症を繰り返し起こした結果、食道粘膜が胃粘膜の細胞(円柱上皮)に置き換わってしまった状態のこと

2.食道がんの症状

食道がんのごく初期の頃は、自覚症状がほとんどありません。そのため、検診や人間ドックの際の、内視鏡検査や上部消化管造影検査(バリウム食道透視検査)によって発見されるケースが多く、食道がんの早期発見には検診が大切であるといわれています。
食道がんは進行にするにつれて徐々に症状が出てきます。まず出てくるのは飲食時の胸の違和感です。食べ物を飲み込んだときに胸の奥がちくちくと痛んだり、熱いものを飲み込んだときにしみるように感じたりするようになります。この症状は、食道がんの初期の方には症状が出てくるのですが、がんが大きくなるにつれて症状が消失していきます。そのため、この段階で医療機関を受診できれば早期に食道がんを発見することができるかもしれません。
次に感じるのは食物のつっかえる感じです。がんが大きくなると食道の内側が狭くなっていくため、食べ物がつっかえるようになります。特に硬い肉や寿司など咀嚼を充分にせずに丸のみしがちな食物を食べたとき、あるいはよく噛まずに食べた時に突然生じることが多いです。
さらにがんが大きくなっていくと、食道をふさいでしまうため水も透らなくなり、唾液も飲み込めずに吐いてしまうことになります。また、食べ物がつっかえて喉を通らなくなると栄養を摂ることができなくなるため、体重も減少していきます。目安として、3ヶ月間に5-6kgの体重減少がみられたら、注意が必要です。

次に、食道がんが転移したときにも起こる症状には、大きく2つの症状があります。
1つ目は胸痛、背部痛です。これらの症状は肺や心臓の病気でもよく見られますが、がんが食道の壁を貫いて外に出て、周りの肺や背骨、大動脈を圧迫するようになると、症状として現れます。
2つ目は声のかすれ(嗄声)です。食道のすぐ近くには声を調節している神経があり、ここにがんが浸潤すると声がかすれます。風邪などでも見られる症状ですが、声帯の動きが悪いと食道がんの可能性も極めて高いものになります。
また咽頭、喉頭、舌などの口から咽頭までのがんである「頭頸部がん」や、胃がんとも重複しやすいということもわかってきています。
日本の食道がんの組織型は扁平上皮がんが90%、10%以下が粘膜層の腺上皮から発生した腺がんとされています。この腺がんはもともと欧米人に多いタイプのがんだったのですが、近年日本の職の欧米化に伴い、今後この腺がんが増加していくことが懸念されています。

3.食道がんの人はどれくらいいるか

食道がんと新たに診断される人数は、1年間に10万人あたり17.9人ほどといわれています。男女別でみると、男性では1年間に10万人あたり31.0人、女性では5.6人であり、割合的には5:1で男性に多い傾向がみられ、2015年のデータによると男女計で23,900人となっています。
また、食道がんによる死亡者数は(2017年)、男性9580人、女性1988人となり、死亡者数は男女計11,400人です。
年齢別でみると、50歳代から患者数が増えはじめ、70歳代でピークを迎えます。男性では70歳を超えると死亡率も50%を超えるようになります。
食道がんの5年相対生存率は食道がん全体で39.2%です。この生存率は病期によっても異なります。病期Ⅰでは71.1%、病期Ⅱでは44.4%、病期Ⅲでは22.2%ですが、病期Ⅳでは10.8%というデータがあります。病期の数字が高くなるにつれて5年生存率も低くなりますので、食道がんによる死亡率を下げるためには、早期発見早期治療が重要です。早期発見のためには、症状が出るより前の発見、 すなわち定期的な検診が大切なのです。

4.食道がんの治療

食道がんの治療には、大きく分けて内視鏡的切除、手術、放射線治療、薬物療法(化学療法)の4つがあります。どの治療が適切かは、食道がんの進行度によって異なります。この食道がんの進行度は、食道がんの広がり、リンパ節転移の有無、遠隔転移の有無によってⅠ~Ⅳで表されます。Ⅰの場合はあまり進行していない状態で、数字が高くなるごとに状態が悪くなります。
食道がんの治療はⅠ期まで外科的に切除すること(手術)が第一選択です。実際には、食道と食道の周囲のリンパ節を摘出する、7時間ほどかかる手術です。食道は胸部から腹部にかけてつながっている臓器であるため、胸部、腹部それぞれに手術操作が必要になります。そのため、基本的には開胸、開腹手術となりますが現在は腹腔鏡、胸腔鏡を使用して手術が行われることもあります。 また、Ⅰ期であっても化学療法を合わせて施行する場合もあります。
Ⅱ期、Ⅲ期でも手術のできる身体の状態であれば、手術が第一選択となりますが、術前に化学療法を行うことが多いです。化学療法は、抗がん剤という薬を用いてがんを死滅させる治療法です。食道がんの場合、比較的高い効果が期待できるいくつかのお薬の組み合わせがあります。また、場合によって放射線治療を行うこともあります。
Ⅳ期の場合は、化学療法を標準治療として症状に合わせて対処療法を行います。いずれにしても、延命や緩和が主な目的となります。
また、近年では食道がんの内視鏡治療も行われています。内視鏡治療は、食道内視鏡を用いて食道の内側からがんを切除する方法です。治療対象はⅠ期よりも早期の0期で、がんが粘膜内にとどまっている場合に行うことができます。