胃がん

胃がん

1.胃がんはなぜできるのか

胃はみぞおちの裏あたりにある袋状の器官で、摂取した食物を一定時間その中に留めてそれを消化するという働きがあります。胃は、食道とつながっている入り口部分を「噴門部」といい、食道への逆流を防いでいます。また、十二指腸とつながった出口部分を「幽門部」といい、食物を十二指腸へ送り出す量を調節する働きがあります。噴門部・幽門部以外の真ん中の部分は「胃体部」といいます。
胃に食物が入ると蠕動運動が始まり、胃液が分泌され更なる蠕動運動によって食物は小さくすりつぶされます。胃液の中にある消化酵素によって蛋白質が分解され食物は粥状になり、幽門部を通って十二指腸に送り出されます。
他にも胃には、食物と一緒に取り込んでしまった細菌を胃酸で殺菌する働きや、悪い物質を嘔吐として出す働きもあります。
胃の壁は、内側から粘膜(粘膜、粘膜下層)、筋層、漿膜(漿膜下層、漿膜)という層になっていて、 そのうち最も内側を覆う粘膜細胞ががん細胞になってしまい、増殖してしまうことで胃がんが発生します。がんは粘膜から徐々に次の外側の層へと広がっていきます。より深く進むと漿膜の外側にまで及び、大腸や膵臓などの近くの臓器にまで広がることもあります。
胃がんが発生する危険因子として、喫煙と食生活が明らかになっています。粘液などに保護されている胃の粘膜が、これらの危険因子によって炎症を起こしてしまうのです。食物について特に注意が必要になるのは、塩辛い食品です。不規則な食生活やストレスも胃に負担をかけてしまいます。また、喫煙によって摂取された発がん物質は、唾液に溶け胃に入ってきてしまうため、胃がんの原因になります。
近年胃がんとの関わりが分かってきたのが「ヘリコバクターピロリ菌」です。胃粘膜に生息する細菌で、感染が持続すると「萎縮性胃炎」と呼ばれる状態になり、これが胃がんの発生と大きな関係があると考えられています。

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2.胃がんの症状とは

早期の胃がんでは自覚症状がほとんど無く、かなり進行していても症状が無いというケースもあります。よくみられる症状は、みぞおち(胃)辺りの痛み・不快感・違和感、胸やけ、吐き気、食欲不振などです。
がんからの出血によって、吐血や下血などの症状があらわれることもあります。いずれも鮮やかな血ではなく、吐血は胃液によってコーヒーのような色に変化していたり、下血の場合もやはり胃液の影響で黒く変化していたりすること(タール便)もあります。
こうした症状は胃がんだけでなく、胃炎や胃潰瘍にもみられる症状であるため、症状だけでは胃がんと診断できません。進行したがんの場合は、体重減少や食事のつかえといった症状がみられることもあります。

3.胃がんの患者さんの数と死亡率

胃がんと新たに診断される人は、2014年のデータを元に推計では1年間に13万3千人いると考えられています(全がん中3位)。男女別では、男性90,800人(全がん中2位)、女性42,200人(全がん中4位)です。
また、胃がんによる人口10万人あたりの死亡者数(2017年)は、男性49.0人、女性24.2人となり、全死亡者数は男女計45,226人でした。年代が上がるごとに患者数は増え、男性は50歳代後半から、女性は70歳代後半から、死亡数が多くなります。
胃がんの5年相対生存率は胃がん全体で62%前後です。病期ごとでは、病期Ⅰで81.6%、病期Ⅱで59.3%、病期Ⅲで39.6%、病期Ⅳで8.0%と、病期の数字が高くなるにつれて5年生存率も低くなっていきます。

4.胃がんの分類と経過

胃がんにはいくつかの分類方法がありますが、一般的には「胃壁深達度」 という、胃壁のどこまでがん細胞が広がっているかという視点での分類によって、「早期胃がん」または「進行胃がん」と区分されます。この分類は、リンパ節を介して他の部位でがん細胞が大きく増えていく「リンパ節転移」の率が大きく変わることから、とても重要な要素 になります。
胃がんの治療方法には、内視鏡治療、手術、薬物療法などがあります。前述の「深達度」のほか、遠隔臓器への転移の有無、リンパ節転移の有無やその高度などに応じた標準治療をベースにし、年齢や身体の状態、希望なども含めて検討していきます。

4.1早期胃がん

早期胃がんは、がん細胞が粘膜または粘膜下層にとどまっているものをいいます。粘膜内にとどまっているものを「粘膜内がん」、粘膜下層まで広がっているものを「粘膜下層がん」といいます。
遠隔転移のない「粘膜内がん」でリンパ節転移が無い場合、基本的には内視鏡治療の対象となります。
内視鏡治療とは内視鏡的切除のことで、胃内視鏡を使用して、胃の内側からがんを切り取る方法です。これには、高周波ナイフで切り取る方法(内視鏡的粘膜下層剥離術:ESD)と輪状のワイヤーをかけて切り取る(内視鏡的粘膜切除術:EMR) という方法がありますが、近年は、技術的進歩や治療適応の拡大などによってESDが普及しています。
内視鏡治療は、手術と比較すると体の負担も少なく、がんだけを切り取り胃を残すため食生活に対する影響が少ない治療法ですが、出血や穿孔が合併症として報告されています。
遠隔転移のない「粘膜下層がん」の場合、基本的には胃切徐手術・リンパ節郭清の対象となります。
手術(外科治療)では、がんと胃の一部または胃のすべてを取り除きます。切除の範囲はがんのある部位と病期(ステージ)によって決定されます。切除と同時に、胃の周囲にあるリンパ節も切除したり、胃の残りと腸を縫い合わせて繋いで食物が通る道を作る「再建」が行われたりします。手術には、縫合不全や膵液漏、副区内膿瘍、肺塞栓などの合併症があります。

4.2進行胃がん

進行胃がんは、がん細胞が筋層より深いところにまで達しているものすべてをいいます。
遠隔転移のない進行胃がんの場合、高度なリンパ節転移の有無によって治療の方向性が変わります。いずれも手術治療の対象となりますが、高度なリンパ節転移がなければ胃切除手術・リンパ節郭清となり、高度なリンパ節転移があれば術前に化学療法を行ったり、他の臓器の合併切除を検討する対象となったりします。
合併切除とは、胃の周辺臓器にがんが広がっている場合に、がんの部分とその臓器の一部もあわせて切除してしまうことです。切除範囲が広がるため、手術範囲も広くなります。
遠隔転移のある進行胃がんの場合、化学療法、放射線治療、緩和手術、対症療法の対象となります。なお、特定の転移の状況によっては、手術を検討することもあります。
胃がんでは、がんや全身状態によって、2つの目的で化学療法をおこないます。1つ目は「手術でがんを取りきることが難しい進行・再発胃がんに対する化学療法」で、がんの進行を抑えることにより生存期間の延長や症状の緩和を目指すものです。一次化学療法から三次化学療法までの段階があります。
もう1つは「再発の予防を目的とする術後補助化学療法」で、目に見えないようなごく小さながんが残ったことによる再発を防ぐのが目的です。がん細胞だけでなく正常な細胞にも障害を与えるため、いずれの目的に使用されるお薬にも副作用が認められています。

4.3スキルス胃がん

スキルス胃がんは、悪性度の高いがんです。他のがんと違い、胃粘膜の表面に変化が現れず、胃壁の中で水がしみこむように広がっていきます。胃カメラでも発見しにくいという特徴があり、見つかったときにはすでに進行がんとなっているケースが多く、腹膜や広い範囲のリンパ節に転移していることがあります。
手術や化学療法を組み合わせて治療が行われますが、再発するケースが多かったり、完治することが難しいがんです。
比較的若い年代で発症すること、難治度が高いことなどから、新しいお薬などの開発が進められています。