胃痛・胃もたれ

胃痛・胃もたれ

1.胃痛/胃もたれはなぜ起こるか

胃は、食べ物をいったん貯蔵し、消化吸収のための準備を行う臓器です。食べ物を混ぜるために熱い筋肉で構成されている「胃壁」で覆われており、内側は柔らかい粘膜で覆われています。
胃の粘膜からは、胃酸(塩酸)、ペプシノーゲン、胃粘液の3つの成分で構成される「胃液」が分泌されていますが、 胃液とは胃の内部において消化や殺菌など、重要な働きをしている大切なものです。胃酸(塩酸)は消化酵素の活性化や殺菌の役割を持つ強い酸性の液体、ペプシノーゲンはタンパク質を分解する酵素、胃粘液は胃酸などから胃壁を守る働きがあります。胃粘液の働きにより、胃酸という強力な酸が分泌されても、胃そのものは消化をされずに済んでいます。

胃痛とは、みぞおち付近に現れる痛みのことです。胃の痛みではありますが、痛み方やその表現方法は、人によってさまざまです。例えば

  • 鈍い痛みが継続する → しくしく痛む
  • 鋭い痛みが走る → きりきりと痛む
  • 脈打つような痛みが絶えず続く → 胃がずきずきする
  • 締め付けられるような痛みが走る → 胃がキューとする

などと表現することがあります。

胃痛の多くはさまざまな原因によってこの胃酸が過剰になり、さらにタンパク質を分解するペプシンも増加してしまうことで胃の粘膜にダメージを与えることで起こるといわれています。 また、胃痛は経験されたことのある方が多い症状ですが、胃痛があっても何の病気でもない・検査で異常がないという方も多く、胃痛があっても何の病気も見つからない方も多くおられます。

一方の胃もたれとは、食事の後に「胃が重い」「胃がムカムカする」「お腹が張る」などと表現されます。
胃の構造として、食道との境目である「噴門」、十二指腸との境目である「幽門」があります。「噴門」は、食べ物を食道へ逆流させない働きがあり、幽門は食べ物が胃から十二指腸へ一度に流れ込まないようにする働きがあります。胃は「蠕動運動」という筋肉の動きにより、食べたものをさらに細かくして消化酵素(ペプシノーゲンがペプシンに変化したもの)と混ぜ、腸から吸収しやすい状態に変えています。そして「幽門」が開いたり閉じたりすることで、少しずつ細かくなった食べ物を十二指腸へ送り出しています。
ところが、何らかの原因により胃の蠕動運動が妨げられたり、幽門の動きが悪くなると、胃の中に食べ物が貯留する時間が長くなってしまい、胃もたれの症状が見られるようになります。

2.胃痛/胃もたれを起こす原因(病気)

2-1.胃痛の原因(病気)

これには、大きく4つの原因が考えられています。
1つ目は、急性の胃腸炎です。暴飲暴食、脂っこいものや刺激性のもの(香辛料など)の摂取、アルコール多飲などのほか、細菌やウイルスへの感染などが要因となり、胃酸の分泌が増えたり、 病原体によって胃粘膜が傷ついたりすることで起こります。
2つ目は、胃炎が慢性化した状態の慢性胃炎です。急性胃炎を繰り返して胃粘膜の炎症が慢性化したり、「ヘリコバクターピロリ菌(以下、ピロリ菌)」に感染して胃粘膜の炎症は慢性化したりして、胃痛の原因となります。慢性的なストレスも、慢性胃炎の要因となります。
3つ目は、胃潰瘍です。これは、慢性的なストレスやピロリ菌の感染のほか、解熱鎮痛剤などのお薬を飲むことでも起こります。過剰な胃酸やお薬の刺激が胃粘膜を傷つけ、長く続くと胃粘膜に潰瘍(ただれ)ができます。
4つ目は、食中毒です。食中毒にはいろいろな種類がありますが特に胃痛を引き起こすとされているのがアニサキス、カンピロバクターです。これらの細菌は胃で症状を引き起こすことから胃痛の要因になるといわれています。

このほか、胃食道逆流症(GERD)や逆流性食道炎などの病気も、胃痛の原因となります。これらの病気は、胃酸や酸性になった胃の内容物が食道へ逆流して起こります。

ところで、最近話題となっている病気に「機機能性ディスペプシア」があります。これは、胃カメラなどからは明らかな炎症などがみつからないにも関わらず、胃痛や胃もたれが続いている病気です。自覚症状から「慢性胃炎」となることもありますが、胃の中には炎症が無いため治療法が変わります。

2-2.胃もたれの原因

これにも、大きく4つの原因があります。
1つ目は、暴飲暴食や脂もの摂取です。脂肪の大部分は胃で分解されず、十二指腸へ送られます。十二指腸は脂肪分解のための消化酵素を分泌しますが、これは胃の運動を抑制する働きもあります。結果的に、胃の中に食べ物が残る時間が長くなり、胃もたれの原因になります。
2つ目はアルコールの多量摂取です。食前酒程度ならば胃の動きを活発にしますが、アルコールが大量かつ高濃度なると、胃粘膜を守る機能が壊れたり、直接的に胃粘膜障害(血流障害)を起こしたりします。結果的に、胃もたれや他の胃の病気につながります。
3つ目は加齢です。年齢とともに胃の働きは低下してしまう傾向にあります。例えば、胃の弾力性が低下することで、胃に以前と同じ量の食べものを入れることができなくなり、小腸に食べものを送り出す速度が低下します。結果的に、胃の中に食べ物が滞留する時間が長くなり、胃もたれを起こします。
4つ目にその他の原因があります。例えば、胃の運動機能異常、内臓の知覚過敏、ストレスの関与など、さまざまな因子が関連していると考えられています。

2. 胃痛/胃もたれがある時はどうすれば良いか

胃痛や胃もたれが起こったら、思い当たる原因などへの対処をしていきましょう。
まず暴飲暴食が原因と考えられる場合には食事量を減らし、栄養バランスの取れた規則正しい食事をとるようにしましょう。もちろん、脂っこい食事やアルコール、喫煙は控えましょう。
そして、食後は胃に負担をかけずに食べ物の消化を助けてあげられるよう、食後30分は入浴や運動を行わずに休息すると良いでしょう。
また、胃痛の元になる病気の要因として、慢性的なストレスもあります。ストレスは胃の働きをコントロールしている「自律神経」の働きを乱し、胃酸の分泌を過剰にするため、慢性的な胃炎や胃潰瘍を起こし、胃痛につながります。ストレスが原因と考えられる場合にはストレスを避ける、あるいはストレスを解消できる生活を心がけるようにしましょう。
さらに、病院でピロリ菌検査を受けるなどして胃痛の原因がピロリ菌であるということが分かった方は、医療機関にで「ピロリ菌除菌」の治療を受けましょう。

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しかし、このように原因と思われる生活を改善してみて症状が持続するという場合には、何か大きな病が隠れていることもあるので、医療機関で診察を受けるようにしましょう。特に嘔吐や発熱、激痛などの異変を感じたら早急に受診しましょう。
胃の中の状態を直接観察するために行われるのが、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)です。これは胃の中に直接カメラを挿入して行う検査のため、目で見てわかる病気の診断にとても有用です。
胃痛を感じる部位として「みぞおち(心窩部)」がありますが、ここには胃の他にも多くの臓器が存在しています。自分では胃の痛みだと思っていたけれど、その原因が実は胆道や膵臓など他の臓器に由来する症状だったりすることもあります。非常にまれではありますが、心筋梗塞や大動脈瘤など循環器系の病気によって症状が出ることもあります。

胃痛などの症状が強く長期間続いている、明らかに体重が減っている、発熱があるなどの状態に当てはまる方は、内視鏡だけでなく、超音波やCTなどによる他臓器の検査を組み合わせて行った方が、よい場合もあります。